海外メディアも注目 釜山の魅力5選⑤乙淑島
自然、人間が共存する生命の地
金海（キメ）空港や慶尚南道（キョンサンナムド）などから釜山広域市に入る時、必ず大きな川を渡る。韓国北部の江原道（カンウォンド）から始まり、慶尚北道（キョンサンプット）、慶尚南道を通って釜山を貫き、南海（ナメ）に流れる洛東江（ナクトンガン）だ。この川と海が交わる場所にあるのが、総面積約3.2㎢の釜山を代表する名勝地「乙淑島（ウルスクト）」。
南浦洞（ナンポドン）やチャガルチ市場から都市鉄道（地下鉄）1号線の下端（ハダン）駅までは約20分。そこから55番の市内バスで1区間移動すると、乙淑島に到着する。乙淑島はオオハクチョウが毎年冬に飛来する世界的な渡り鳥の渡来地で、海水と淡水が交わる汽水域の生態系がそのまま残る「自然の宝箱」とも呼ばれる。
■汚泥の廃棄場が再生事業で生態系の宝庫に
△乙淑島の南部は湿地がそのまま保存されている。
4月、博覧会国際事務局（BIE）の視察団が、釜山で最初に乙淑島を訪問した。海雲台（ヘウンデ）海水浴場や西面（ソミョン）など釜山を代表する観光地ではなく、中心部から離れた島を訪れたのは、2030国際博覧会に韓国が提案した「世界の大転換、よりよい未来に向けた航海」というテーマを代弁する地だからだ。乙淑島はかつて環境汚染が深刻で、打ち棄てられたような島だった。2009年と2012年には汚泥の廃棄場などが島外に移転し、生態公園として整備された。生態空間に変わった乙淑島は、釜山エキスポのサブテーマの一つ「自然と持続可能な生活」を具現する場所だ。視察団はここで釜山の自然を満喫し、傷ついた野生動物を自然に帰す「野生動物治療センター」などを見学。自然と共存する釜山の姿を体感した。
■島の北部は市民の憩いの場南部は生き物の拠り所
乙淑島の「乙」は韓国の漢字で「鳥」を意味し、鳥（乙）が多く水が澄んだ（淑）島という意味がある。その名の通り渡り鳥が多く、1950年代には東アジア最大の渡り鳥の渡来地だった。1966年、島一帯が韓国政府が保護する「天然記念物」に指定され、1987年に洛東江河口堤が完工後、島は徐々に公園に様変わりしていった。それでも毎年冬になると、多くの渡り鳥が休息のため島にやって来た。現在乙淑島は洛東江河口堤と、その上をつなぐ自動車道路（洛東南路）を基準に、上・下段（北部、南部）に分かれる。トンネルなどでつながっており、下端駅方面から徒歩でも行き来できる。
北部（洛東江方向）と南部（海方向）は雰囲気が異なる。面積約48万2000㎡の北部は、市民や観光客が文化を享受し、一休みできる洛東江河口堤展望台や釜山現代美術館、乙淑島文化会館、乙淑島生態公園などが立ち並ぶ。面積約272万㎡の南部は湿地がそのまま保存され、現存する自然を極力破壊しないように生態探訪路が造成されている。
■現代美術を鑑賞し、自転車に乗って島を一周！レンタルは無料
△乙淑島のバス停留場のすぐそばに釜山現代美術館がある。
最初に立ち寄るのは釜山現代美術館。外壁を島で育った植物に覆われた3階建て長方形の建物で、乙淑島バス停留場で降りるとすぐ見える。敷地約2万9900㎡、延べ面積約1万5312㎡で、地下2階、地上4階。5つの展示室や子ども芸術図書館、ギャラリーカフェなどの施設を完備している。
現代美術館の外壁は「垂直庭園（Vertical Garden）」という作品。「庭園」が土地の上にあるという固定観念を覆し、垂直なコンクリート壁の上に造られ、コンクリートが自然と同化したという意味がある。植えられた植物も計175種の島の近くに自生するもので、現代美術館では名前の通り、現代美術の真髄と言える多彩な展示が見られる。
△乙淑島では、誰でも無料で自転車レンタルができる。平地で道路整備も行き届いており、気軽にサイクリングが楽しめる。
美術館の東側はクラシックやオペラ、ミュージカルなどが開かれる「乙淑島文化会館」、その後ろにはさまざまな体育施設と整備された公園がある。
乙淑島を回るなら、自転車をレンタルするのもおすすめ。現代美術館近くにある乙淑島文化会館の東側に向かうと、島の管理や清掃などをする「行政支援センター」とカフェ「ブラックアップコーヒー」があり、カフェの裏手には「乙淑島自転車無料レンタル所」がある。自転車のレンタル時間は平日2時間、土・日曜日は1時間30分。レンタル所の入り口に置かれた申請書を作成し、スタッフに身分証明書と一緒に出せば、1人当たり1台借りられる。パスポートも提示可能。レンタル可能時間は午前9時30分から午後3時40分まで。自転車は満6歳以下の子供用、小学校低学年用（1～3年生）、高学年用（4～6年生）、中学生以上からレンタルできる大人用がある。自転車のレンタル証とヘルメットを受け取ったら、自転車に乗れる。
無料の自転車レンタル所が定休日の場合は、近くの有料レンタル所を利用できる。家族が一緒に乗れる複数人用の自転車もあり、1人用は1時間5000ウォン（約530円）、複数人用は2時間1万ウォン（約1050円）。
■生態探訪船に乗って洛東江河口ツアー
△釜山観光公社運営の「洛東江生態探訪船」。
洛東江河口の風景をゆったりと楽しみたければ、釜山観光公社運営の「洛東江生態探訪船」がおすすめ。洛東江の流れに沿ってエコツアーが楽しめるプログラムで、乙淑島自転車レンタル所の北東にある船着き場を出発し、金海地域、洛東江を遡って帰って来るコースだ。
毎年4月から10月まで運営しており、事前予約後に乗船できる。乗船申告書の作成のため身分証明書が必要で、乗船20分前までには乗船場に到着しておく必要がある。最大30人まで乗船可能。船が出発すると、生態探訪ガイドが洛東江の生態や歴史について解説してくれる。解説を聞いた後は船の2階で陽の光と風をいっぱいに浴びて、川の眺めを満喫しよう。
洛東江生態探訪船の特徴の一つが環境に優しい燃料を使用している点で、2階の太陽光発電と風力発電機からエネルギーを蓄える様子が直接見られる。船内には望遠鏡が置かれており、遠くの風景まで観察が可能だ。予約などの詳細事項は、洛東江生態探訪船のホームページ（btoeco.or.kr）から確認できる。料金は区間によって異なり、大人7000ウォン～1万ウォン（約740円～1050円）、中高生3000ウォン～5000ウォン（約320円～530円）など。
■洛東江河口エコセンターで
渡り鳥探訪
△乙淑島を訪れる渡り鳥のバードウォッチングができる、洛東江河口エコセンター。
約272万㎡の南部（海方向）はほとんどが湿地だ。渡り鳥と湿地の保護のため、南部の敷地半分以上では出入りを制限している。南部で入場できる場所は洛東江下流の渡り鳥渡来地、乙淑島渡り鳥公園、乙淑島生態公園など。
島南部で必ず訪れたいのが「洛東江河口エコセンター」。2007年に開館し、乙淑島生態公園内にある。河口湿地の生態を学べる展示教育や、乙淑島全体について知ることができる。渡り鳥や洛東江についての説明のほか、島の回り方などを聞けるため、初めての人に最適だ。案内所で配られるパンフレットの地図に沿って探訪路の散策やバードウォッチングが可能。現在洛東江河口エコセンターは展示場リモデリングのため休館中で、12月末の再開館を予定している。河口湿地の生態観覧は、自由にできる。
乙淑島へのアクセス：都市鉄道1号線下端駅3番出口を出て、バス乗り換えセンター（ミョンジ方面）から乙淑島行きのバス（市内バス3、58、58-2、55、520、168番）乗車後、乙淑島休憩所下車（木製の陸橋前）。
〈海外メディア注目の釜山の魅力シリーズ 完〉