ビデオアートの創始者、代表作が一堂に
「ナムジュン・パイク、ナムジュン・パイク、そしてナムジュン・パイク」
韓国内外から160点以上の作品を展示…釜山現代美術館で3月16日まで
「ビデオアートの父」として知られる白南準(ナムジュン・パイク、백남준)の代表作を鑑賞できる展示会が釜山で開かれる。乙淑島(ウルスクト、을숙도)にある釜山現代美術館は、1階の展示室4と2階の展示室5で、特別展示「ナムジュン・パイク、ナムジュン・パイク、そしてナムジュン・パイク」を3月16日まで開催している。
20世紀を代表するアーティスト、ナムジュン・パイクは、ハプニング(偶然性を尊重したパフォーマンスや展示を行う芸術形式)やパフォーマンスアート、テレビや放送、人工衛星、複数台のテレビに映像を映す表現方法やレーザーまで、多様な技術を駆使し、実験的で創造的な作品を発表している。新しい技術と芸術に絶えず挑戦し続けたナムジュン・パイクは、今日でも「最も現代的な芸術家」として評価されている。
△ ナムジュン・パイクが1964年に制作した「ロボット K-456」は、人間のように歩き、話し、さらには排泄行為まで再現する。(写真提供: 釜山日報)
釜山現代美術館と白南準アートセンターが共同企画した今回の展示は、ナムジュン・パイク没後に行われた回顧展の中で韓国最大規模。白南準アートセンター、国立現代美術館、蔚山(ウルサン、울산)市立美術館、慶尚北道(キョンサンプット、경상북도)文化観光公社、フランクフルト現代美術館など、韓国内外の美術館から貸与された合計160点以上の作品、写真、映像、アーカイブ資料などが展示される。
展示は、1961年のパフォーマンスビデオ「手と顔」から始まる。この作品は、作家が自らを芸術の媒体として扱い、芸術的な自我を認識していたことを示す初期の作品である。1962年の作品「フルクサス・チャンピオン・コンテスト」は、さまざまな国の作家たちがバケツの周りで排尿しながら、自国の名前を叫ぶパフォーマンスで、社会や芸術の権威に挑戦するナムジュン・パイク特有のユーモアが光る作品だ。
1963年のナムジュン・パイク初の個展「音楽の展覧会ーエレクトロニック・テレビジョン」の作品も鑑賞できる。また、「Zen for TV」、「Magnet TV」、「TV Crown」など、当時の展示の臨場感をそのまま感じられる写真も公開される。
ナムジュン・パイクが製作した最初のロボット「ロボット K-456」も展示されている。阿部修也など、日本のエンジニアと共に制作したこの作品は、20チャンネルのリモコンを使って遠隔操作が出来るロボットで、街を歩き回りながらジョン・F・ケネディ大統領の演説を再生したり、まるで排便するかのように豆を排出するパフォーマンスを行った。
阿部修也が描いたロボットの設計図や、ナムジュン・パイクと阿部が交わした手紙の原本も一緒に展示されている。また、ナムジュン・パイクと長年コラボレーションを行ったチェロ奏者であるシャーロット・モーマンの「TVチェロ」や「オペラ・セクストロニック」も鑑賞することができる。
△ 1961年作「手と顔」(写真提供: 釜山現代美術館)
映画館では、ナムジュン・パイクの代表的なビデオ作品15点を大型スクリーンで上映する。自身の芸術について語るインタビュー形式のビデオ「ナムジュン・パイク:テレビのための編集」をはじめ、「ジョン・ケージに捧ぐ」、「Tiger Lives」など、ナムジュン・パイクの芸術世界を貫く映像作品を観ることができる。
さらに、アメリカ人監督アマンダ・キムが制作した2023年のドキュメンタリー「ナムジュン・パイク:月は最古のテレビ」も公開される。このドキュメンタリーは、ナムジュン・パイクを20世紀初のデジタルクリエイターとして捉えた、新しい視点が紹介されている。
△ 1974年作「TVブッダ」(写真提供: 釜山現代美術館)
1階と2階を結ぶ空間では、「ケージの森/森の啓示」を鑑賞することができる。この作品は、ナムジュン・パイクの大規模なインスタレーション作品の中で一番の注目作で、8mの高さの木々が森を成し、その枝にモニターが取り付けられた作品だ。巨大なガリバー・ロボットと、その周りを18体の小さなロボットが取り囲む作品「Gulliver」も展示されている。
展示のクライマックスは、2000年にニューヨークのグッゲンハイム美術館で最後に発表されたレーザー作品「Three Elements」だ。その向かい側には、韓国の歴史的な激変からナムジュン・パイク個人の深い煩悩までを108台のテレビモニターを通し、短く分割されたビデオで表現した作品「The 108 Torments of Mankind」がある。この作品は1998年の「慶州(キョンジュ、경주)世界文化エキスポ」のために特別に制作されたが、今回の展示で再公開されている。
展示は毎週火曜日から日曜日の午前10時〜午後6時まで。休館日は毎週月曜日と1月1日。観覧料は無料。詳細については釜山現代美術館の公式サイト(busan.go.kr/moca)へ。
△ 1993年作「ジンギスカンの復権」を鑑賞する子どもたち。(写真提供: 国際新聞)